すばるはそっと振り返った。コトリスはただ静かに見守ってくれていた。
「……わたしがきちんと消えないと。ユキコちゃんだって、忘れられないのよ」
コトリスは全てわかっていると眼差しで返し、手を差し伸べる。
「いいの? コトリス」
「すばるが望んだのと同じ気持ちさ」
すばるはコトリスの前に来ると、両手を何度か表裏にひっくり返した。
「わたしがわたしを消すって、願えばいいの?」
「ココは想いが形になった場所だから、大体はなんとかなる。ってキミはつくづく、スターゲイザードのあれこれを、知っているようでピンとキてないんだね」
「むー……わたし、スターゲイザードになってた時間、全部合わせて丸一日もないのよ」
口が三角形にならないように頬をふくらませたすばるを、コトリスは明るく笑った。昨日、眠りにつく前と同じ、気ままにのん気に。
でもいつまでも、こんな時間は続かれない。
やがてどちらからともなく両手を胸の前でお互いに向け合った。
あの歌がくちびるからこぼれてくる。
「スターゲイザー」
二人は互いを見つめ合った。
「ほしみるひとみ」
すばるの黒くて丸い瞳の真ん中に、星より鮮やかにコトリスが映っている。
「みつめるひとみ」
見つめられたコトリスの瞳にも、光りのようにまっすぐすばるが映っている。
「ひとみとひとみ」
見つめ合った瞳と瞳の、そのまた瞳の中に、幾重にも彼方まで二人の姿を照らし合う。
すばるとコトリスは、互いの手と手に触れた。
「スターゲイザード」
そして宇宙は静寂に包まれる。
長い髪の少女と、金色の髪をした少年は、どこにもいない。
あとにはかすれた岩石で作られた、無機質な小惑星が残るだけだった。