すばるは知ったことと思い出したことを全て打ち明けた。
有輝子がすばるを見つけた写真と、すばるがコトリスを見つけた写真は、一カ所だけが違っていた。
すばるを見つけた写真には、右下にうすぼんやりと一点だけ星が映っているが、コトリスを見つけた写真には同じ場所に二つの点が映っていた。
有輝子は連星の内、すばるの星だけを見つけた。一方ですばるは、自分の星と隣り合うコトリスの星も見ていたのだ。
やがてすばるは、有輝子に消えろと望まれたから、地球から姿を消した。でも有輝子はすばるを追い、この星にやって来てしまった。それからナナになった有輝子に望まれ、すばるは再び姿を消した。
でも有輝子は今どこにいるかもわからない。
すばるは息つく暇もないくらい懸命に話した。コトリスは時々うなずきながら、全く口を挟まずに最後まで聞いてくれた。
何と思われるだろうかと落ち着かないすばるの前で、コトリスは右手の人差指を立てた。
その指ですばると彼自身を交互に差す。
「つまりボクは、スターゲイザードのスターゲイザードだったってコトか」
拍子抜けするほど軽い声だった。
「スゴイなぁ、そんなのアリなんだなあ。でも有り得ないコトじゃないし、ボクはココにいるもんなぁ」、コトリスは至って冷静に感嘆をもらすだけ。
飴玉でもなめているみたいにほっぺたを片方ずつ交互にぷくぷくふくらませている。
すばるは腕を伸ばし、左手の小指で彼のほっぺたをつついた。
「わっ、ど、どしたの」
丸い目をぱちくりさせたコトリスは、気取らず特に力強くもなく。
だから、すばるがずっと会いたかったコトリスだった。
やっと本当に、また会えた。
「コトリスコトリスコトリスーーーーーーっ!」
すばるはコトリスの首に、思いっきり抱きついた。
「な、ななな……うわあっ」
突然のことにコトリスはしりもちをついた。
彼の手がすばるから離れ、床に両手をついて体を支えた。でもすばるはますますお構いなしに強く抱きしめる。
「すばる、息できな、ううんしないけど、でもちょっと、苦しいから離れ……」
「やだっ」
「えーっ……ぅえっ」
コトリスは両腕をばたばたさせたけれど、すばるは本当にしばらくそのままでいた。
せめて今だけは喜んでいたい。
本当のことを隠してはおけないから。
「コトリスごめんね、ごめんなさい。わたしコトリスのこと誰にも伝えられない。わたしスターゲイザードだった。わたし地球で、誰にも見えないの。声もかけられないの。コトリスがここにいること、誰も知らないままなの。ごめんね……!」
「いいんだよ、そんなコト。見えなくたって、知られてなくたって、全て消え去ってしまうワケじゃないんだから」
コトリスはすばるの体を優しく離して両手でほほを包みこんだ。その幅広な指先が、すばるの下まぶたにそっと触れる。
「ボクはココにいるんだ。すばるに見つめられて、ボクの想いは形になった。そうじゃなければボクは今、ココにいるはずがない。誰がなんと言ったって、絶対に」
めじりとほほをうんとゆるませて、コトリスはほほえんだ。
「絶対、消えるワケじゃない」
そして重いものを全て吹き払い、足先を軽くひるがえして立ち上がる。
「そもそもキミが人間だったとしても、ボクのコトは伝えられなかったと思うよ」
両腕やお腹を伸ばしながら、いとも簡単に言い放った。
「ボクらの世界は人間の体だとかはぜーんぶとっぱらった、心の根っ子がむき出しになる世界だ。人間のユキコちゃんはユキコちゃんとしてココに来られなかっただろ? ユキコちゃんでいた時のことも忘れていたし」
コトリスはまだ座ったままのすばるを、ぴっと指差した。
「ってコトはもしキミが人間だったら、地球に戻った時には、ココでのコトなんかぜーんぶ片っ端から忘れてたってコトだよ」
「あっ……」、すばるが目も口もまんまるに開くと、コトリスは「ねっ」とウインクした。
――なんで、そこで、ウインクなんだろう。
すばるにはさっぱりわからなかった。
――どうしてコトリスは、こんなに優しいんだろう。
すばるの手のひらが熱くなっていく。
これほどのコトリスにどうして会いたかったのか、忘れちゃいけない。
落ちこんでいたって、どうしようもない。