StarGazereD  第6章 − 4回


 すばるが登校してきたらさっそく話がしたい。有輝子はすばるのクラスを調べるべく、二年生の下駄箱を回った。 そういえばまだクラスも知らなかったのだ。
 すばる本人は「二年三組じゃない」とだけ言っていた。有輝子自身は三組だから、すばるがもちろん在籍していないことは知っている。
 だからそれ以外、一組、二組、四組と下駄箱を見て行こう。下駄箱には一人ずつ名前シールが貼ってある。
「しらとり、しらとり……。斉川、清水……鈴木。一組じゃないか」
 下駄箱は名前順に並び、一組に『白鳥』はなかった。続く二年二組にも白鳥はいない。ならば四組で決定だけれど、念のために四組の並びも探してみる。
 四組にも白鳥はいなかった。
 どこかで見落としたのだ。
 有輝子は溜息をつき、もう一度、一組の最初から白鳥を探した。
 それでも白鳥すばるの名前は、どこにもない。
「……あれ」
 四組の下駄箱の前で有輝子は首をかしげた。どうしてすばるの名前がないのだろう。
 もしかしてすばるは転入生で、全く違う場所に下駄箱があるのだろうか。
 すばるが二年生というのは間違いない。
 上着の左胸ポケットについた四角いピンバッチは青色で、二年生という意味だ。
 何にしても、ここを探していても意味がない。
 有輝子は図書室に向かった。図書カードはクラス毎に管理されているはずだ。
 図書室は夜間は鍵がかけられるけれど、古い校舎だからろくな機能は果たしていない。
 立て付けの悪い扉を上下に数回ゆすると、あっさり戸が空いた。
 二年生の図書カードの引き出しを片っ端から調べた。図書委員が間違うこともあるから、今度は二年三組のコーナーも調べた。
 でも、白鳥すばるのカードはどこにもない。
 どうせ図書委員がいい加減なのだ――わずらわしい作業が面倒くさくなって、有輝子は図書室もさっさと後にした。
 向かう先は三階、二年生の教室だ。
 各教室の教卓にはクラスの生徒の名簿が貼りつけてあるから、それを見るのが一番確実だ。さっさと最適解を導き出せなかった自分に少しイライラする。動揺を自覚してしまう。
 すばるに会ったところで、何をどう伝えればいいのだろう。
 勝手に写真を投稿されたのは頭にきたけれど、だからってすばるを失いたくない。
 この気持ちと同じだけすばるを嫌な気分にさせれば気が済むんだろうか。
 ――イヤなヤツ、私。
「……知ってるわよ、そんなこと」
 有輝子がぼさっとつぶやいた時には、二年一組にたどりついていた。
 教卓に貼られた名簿に、白鳥すばるの名前はなかった。
 続く二年二組の名簿も違った。
 有輝子の胸がいやに早く鳴り始めた。下駄箱でも、図書室でも同じだった。一組にいなくて、二組も外れで、四組に向かう。
 でも手掛かりはつかめない。
 すばるが学校の、どこにもいないことになってしまう。
 そんな馬鹿なことがあるはずない。数分後には今度こそ当たり前に、「やっぱり二年四組だったのね」と思う未来がやってくるはずだ。
 有輝子は三組の教室を抜かして四組に入った。教卓を前にした。名簿を一人ずつ頭から、小さく音読していった。
 二年四組、三十五人の中に、白鳥すばるの名前はなかった。
「……なんで」
 ありえない。一組じゃない二組じゃない四組じゃない。
 じゃあ、すばるは何組だ。
 くらくらしてきた頭を重く感じながら二年三組に入った。
 いるわけがない、むしろここにいたらおかしいと思いながら、三組の名簿を見る。
 もちろんすばるは三組じゃなかった。
 有輝子は力を失った体で床にへたりこんだ。
「すばる……すばる。白鳥、すばる……」
 確かなことは何も見いだせてないけれど、ただ一つだけ恐ろしい現実は、昨日からすばるに会えていないことだ。
 もしすばるがどこにもいないのなら。
 このまま二度と会えないのだろうか。
「やだ……いやだ……」
 有輝子の両目から涙がこぼれた。これほど体が勝手に泣いたのなんて生まれて初めてだった。それも自分で気づかないくらい、ただ静かに泣いていた。
 やっと、友達ができたのに。
 ――会いたい、すばる、会いたい……!
 雲に隠されていくように、有輝子の意識が遠くなっていった。